07:音に溺れたお姫様 4 / 11

彼らは心底楽しそうに演奏するのだ。
バンドで活動できるのが楽しくて嬉しくて仕方ないって、こちらまで伝わってくる。



ステージがきらきらと輝いて見える。

心が動かされる。
楽しくて素晴らしくて。
言葉にできないほどの、衝動。



「ありがとーございましたっ!」



魚住先輩が笑顔で、大きな声で礼を言って頭を下げた。


もう終わってしまった。2曲。たった2曲だ。

私は
彼らの音楽をもっと聞きたい。
彼らの音楽をずっと聞いていたい。



真麻が隣で「やばかった、すごかった」なんて語彙力もあったもんじゃない言葉を繰り返し吐き出す。

私もきっと口を開けば同じことになるだろう。



彼らの音楽から離れられないような感覚。
彼らの音楽に溺れていくような感覚。



≪≪prev




しおりを挟む
back




BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -