01:夢心地 2 / 10 自販機に向かって、適当なジュースを2本選ぶ。 うん、暑い日には炭酸とかいいかもしれないな。 購入したペットボトルを持ち上げて、おつりをとりあえずポケットに入れて少しだけ上機嫌で振り返る。 瞬間。 どん、と人にぶつかってペットボトルを落とした。 私も間抜けにどてりと尻餅をつく。 「いって、」 いかにも不良やってまーすという顔の人が、私を睨んだ。 「おいお前、先輩にぶつかっておいて謝りもしねぇのかよ」 あうあうと私は口を上下した。 ごめんなさい、その言葉も恐怖で吐き出されない。 しびれを切らしたらしいその人は私の腕を掴む。 「っひ」 恐怖で、反射のように。 その男の人を突き飛ばした。 「……ってめぇ」 「っ!ごめっ、なさっ」 あ、言葉出た。 それどころじゃないんだけど。 「おい」 機嫌の悪そうな低い声が、届く。 男の人は気にせずに私を睨んでいるが、その声は彼の下から聞こえてくる。 ≪≪prev しおりを挟む back |