25:ぜーんぶ、おれのもの 1 / 10

「おはよう美幸ちゃーん! 聞いて聞いて!」

 朝、廊下で香月くんが嬉しそうに近寄ってきてはCD-ROMを私に見せつけてくる。

「おはよう! 練習の時も聞いたしミュージックプレイヤーにも入ってるよー」

 私が香月くんに呆れたように笑ってみせると、香月くんも笑う。
 フェアリーテイルというバンド名と曲名が書かれたそれをぶんぶんと振りまわして、彼はにっかりと笑った。

「今までの中で好きな曲だからさ! 何回でも感想聞きたいの! 今日の昼休み大丈夫だって思いたいし!」


 今日の昼休み、ご飯時にミュージックフェスのオープニングバンドを決めるコンペを行うらしい。
 各々のバンドが録音した音を流す、とのこと。結局5組くらいのバンドが参加してるんだって。

 その時にフェアリーテイルが流すのは、香月くんが持ってるCDに録音された、弥生先輩の新曲だ。

 彼ららしい、騒がしくて明るい歌。だと、思う。
 始まりから一斉に鳴り出す楽器たちに、魚住先輩のボーカルが映える。
 私も好きな曲だ、なんて伝えると彼は嬉しそうに笑った。


「あー、私も緊張するっ」
「皆で空き教室使ってご飯食べながら聞こう!」
「いいかも! あ、でも私、日直の仕事あるから途中参加しようかな」


 残念、と香月くんは笑う。

「フェアリーテイルは2番目だから、それまでに終わらせて来てね?」
「うん、プリント集めて提出だけだからすぐ行けると思うよ!」


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