23:弱虫騎士と悪役少女 5 / 7


「変わろうとすることは、嘘つきなんかじゃないよ……!」


 元々香月くんがどんな人間だったかなんて分からない。
 知りたくないといえば嘘になるかもしれない。それでも、それを問い詰めて彼が泣いてしまうというのならば、私は聞こうだなんて思いもしないと思う。


 私にとって、目の前にいる人気者で周りを笑顔にする明るい男の子、それが「灰葉香月」だ。



 葛原先輩がつまらなさそうに深く息を吐き出してから、腕時計に目をやる。

「あらあら、もう昼休みも終わっちゃうわね」

 周りの野次馬の喧騒を私達に投げ出して、ここから去っていった。
 私達もこんなところにいたくなくて、香月くんを引っ張って階段へと向かって行った。
 1年生の教室は4階だなんて、誰が決めたのだろうか。すごく遠く感じる。

 4階につくと香月くんは泣きはらした目で無理矢理笑って「ごめんね」とこぼした。こぼして教室へと向かって行った。
 何を誤っているのだろうか。彼は悪いことを何もしていないのに。


 私は何も言えなくて。
 彼の背中を見送ってから私も教室へと向かう。


 自身の教室に近付くにつれ聞こえてきたのは女子の噂話だった。


「灰葉くんと付き合ってるって」
「でも3組の雪代といつも仲良いって」
「今日赤羽先輩と一緒に昼登校」
「喫茶店で魚住先輩と一緒にいるとおろ見たって人が」

 そんな言葉がちらほら聞こえてくる。
 宇佐美先輩の流したもの以外にも、フェアリーテイルのメンバーとの噂……事実だけど別に恋愛の内容じゃないじゃんっていうのとか、そういう感じのがひそひそ話のように聞こえてくる。大声じゃないか。

 皆には申し訳ないけど無視すればすぐ噂なんて消えるだろうか。


 教室に入ると視線が一斉に向く。
 こういうのは少し苦手だ。

 けれど気にしている場合じゃないと、無視して真麻へと近付く。
 もうすぐチャイムも鳴るはずだし、真麻と話をしていれば周りの視線も気にしなくてもいいはずだ。


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