21:『edge』 1 / 8 どうしてかつまらない表情を浮かべた御小原くんがそこにはいた。 見慣れないギターケースを背負って、私に近付いてくる。 「御小原くん、ギターやってたんだ」 登くんと、一緒だなぁ、なんて。 ふ、と小さな笑い声が聞こえる。 「ねぇ、今誰の事思い浮かべた?」 まるで、見透かしているかのように。 少年の真っ黒な光のない瞳が私を貫いていた。 私の返答も聞かずに御小原くんは私の腕を引っ掴んで歩き出した。 抵抗しようとするものの抗えずに、教室を出て歩き続ける。 「どこっ、行くの?」 「二階」 二階の、何処だろうか。 私もまぁ二階に戻りたいけれど、視聴覚室に行くことはないのだろう。 着いた場所は、音楽室だ。 吹奏楽部とかが、使ってるわけじゃないのか。 御小原くんが遠慮もなしに扉を開けると三つの視線がこちらに向いた。 「凪ちゃん遅かったじゃないのぉ……あらァ? 美幸ちゃんじゃない!」 葛原昭彦先輩。 「あぁー。香月くんの自称彼女だぁー」 宇佐美真白先輩。 「……何でそいつを連れてきたのよ、凪っ」 青葉詠ちゃん。 最近見知ったメンバー達、だ。 ≪≪prev しおりを挟む back |