20:ぼくのかのじょ。 1 / 11

 視聴覚室につくなり香月くんが飛び出してきた。
 擬音で表すなら「ぷんぷん」だ。

 馬鹿にしたように笑った弥生先輩が近付いてきて、私を見た。

「美幸ー? 彼女のふりなんて面倒事やってんなぁ?」
「えっ、別に面倒では……」
「えっ!」


 私の言葉に顔色を変えたのは香月くんだった。
 みるみる寂しそうなものになっていく。
 弥生先輩は「やっぱりな」なんて楽しそうに笑った。

 えっ、何々? 何があったの。
 香月くんが私の肩を力強く掴んだ。


「ふり、なんて一言も言ってないじゃん!」
「でもそういうことでしよ?」
「付き合ってって言ったんじゃん!」

 改めて、お願い、なんて香月くんが一昔前に流行ったCMの犬みたいな表情でうるうると見つめてきた。
 ず、ずるいと思いますそれ。



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