19:これを恋だと呼ばずして、 12 / 12

 置いてあった眼鏡をかけてベッドから抜け出した登くんが踵の潰れた上履きを履いて、保健室の出口へと向かっていく。

「ずるくてごめんね。あぁそうだ、呼びに来てくれたんだよね」


 付き合ってるの? の言葉に否定したくなって。
 冗談かと思ったら涙がこぼれ落ちそうなくらい、悲しくなって。
 たくさんたくさん、登くんでいっぱいになっちゃって。

 顔さえ、見れなくて。


 ――これを登くんの言う通り恋ではない別のものだって言うなら、恋ってやつはそうとう複雑なやつなんだと思うんだ。


「行こっか」


 登くんは私の気持ちなんかつゆ知らず。
 にこやかに私に手を差し伸べた。





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