19:これを恋だと呼ばずして、 10 / 12






「美幸」





 慣れない登くんからの呼び捨てに、脳が揺さぶられる。
 駄目だ、もう何も考えられない。


「……キス、していい?」


 優しく、甘く告げられた声に何も返すことなんか出来なかった。

 駄目だ、何か駄目。
 はやく、はやく。
 先生、戻ってくればいいのに。
 そうしたら、冷静になれる気がする。

 そんな考えもどっかにいってしまう。

 無言を肯定と取ったらしい登くんの唇が私のそれへとゆっくり触れる。

 短いキスはあっという間に終わりを告げて、顔が離れていった。


「ホント、ちょろいの。星尾さん、どうにかした方がいいよ」
「……え」

 登くんが笑う。
 まさか、全部。
 悪戯だったと言うのか。



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