19:これを恋だと呼ばずして、 2 / 12 「何っ、何も言わずに、お願い、なんだけどっ」 香月くんの一生懸命の言葉は本当に焦っているのか支離滅裂で。 何言ってるかわからない。 きっ、と真剣な表情を浮かべて、私を睨むように見ていた。 「俺とっ、付き合って!!」 「えっ? どこに?」 「そんな巫山戯たオチじゃなくてぇ!」 えっ、付き合う? お付き合い? それは、巫山戯たオチじゃないってことは、つまり、恋愛的な意味で? だけれどそれは愛の告白というには少しも羞恥を感じない。 見つめ合うと言うには可愛げのない睨めっこをしている内に、香月くんの後ろから足音が聞こえてきて香月くんが「ひっ」と幼い子供のような声を上げた。 「香月くんー、どこにいるのぉ?」 ふわり、ふわりと柔らかい女の人の声が近付いてくる。 ひょっこり、現れた女の人はふんわりとした髪の毛が肩にかかった、可愛らしい人だった。 ≪≪prev しおりを挟む back |