18:メランコリック 3 / 8


「“うちの子”に何か用ですか? 昭彦先輩」

 声がして、それが魚住先輩であることを理解した。
 うちの子って。お母さんですか。

 上を向いて先輩の顔を見て、ぞっとする。表情が冷たい。なにか怒っているのだろうか。
 普段にこにこ優しい魚住先輩の、この冷めた表情はヤンキーもが逃げ出しそうなものだった。


「あらぁ、ひろちゃん……何でもないのよ?」

 昭彦先輩、そう呼ばれた彼は魚住先輩の表情を見て笑う。
 よく笑えるな、私なんか走ってこの場を逃げ出したいくらいだ。

「そう。行こうか星尾ちゃん」
「えっ」

 どこにですか。そんなこと言えやしなくて口を閉じた。従わないと駄目らしい。
 周りに助けを求めようにも騒がしい喧嘩とは違う冷戦は周りにとってはただの会話に見えるようで、誰もこちらを気にも止めない。


「あらぁ逃げなくてもいいじゃない、可愛くないんだからっ」
「気持ち悪いので話しかけないでもらえますか」
「冷たいわね、ひろちゃん」
「黙ってほしいんですけど、クソオカマ」



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