c:アンチラフメーカー 9 / 9


 魚住さんの下の名前は広明のはず。なのでこーめーちゃんだなんて呼んでみる。
 赤い人にツッコまれた。軍師、こーめーちゃん、頭いいし丁度いいじゃないか。
 赤い人に視線を向けて口を開いた。

「赤い人ごめんね、前センパイ怖くて逃げちゃった。だってぇ、不良のいじめっ子っぽくて怖いんだもーん」
「おい金髪そこに直れ」
「弥生、許してやって」
「甘やかすな! この優男が!」

 やだ怖いこの人。

「香月くんも。そうやって本当のことずばずば言うから昨日の子たちの逆鱗に触れてたんじゃないの。ほら謝る」
「俺中学の時は1人で机に座ってるタイプだったもんっ! ごめんねぇ、はにわちゃん」
「おいてめぇもだ広明。どっちも1回殴らせろあと変なあだ名つけんな」

 これからは上辺だけじゃなくて、本当に笑えるようになるために笑顔を作っていこうか、なんて。


「じゃあ弥生、俺行くから。魚住さんもまたね」
「あぁ」


 そう言って眠たげな顔をした少年は歩き出した。
 ネクタイ同じ色だし、彼も俺と同学年なんだろう。

「……お友達?」
「まぁ、そうね。お友達」

 少し考えて魚住さんがそう言った。

「2人の友達は俺の友達っ! お話してこよー!」

 同学年だし仲良くできるかもしれないなんて思ってその背中を追いかけた。


「何なの、昨日と全然違うけどあの金髪」
「悩んでたこと吹っ切れたみたい。元気になってよかったしょ」
「知らねーよ。つか、登とあれの組み合わせはまずいんじゃねーか」
「……登くん、なんかあんの?」


 自然に笑えるようになるまで、きっとあと少し。





[アンチラフメーカー:fin]

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