16:毒吐少女とお人形 8 / 8

「どうせ男狙いじゃん? 誰狙ってんの?」
「詠」

 戒めるような弥生先輩の声が聞こえる。

「いつも敵を作るような言い方やめろっつってんだろ」
「五月蝿いな、何であんたの言うこと聞いてやらなきゃなんないのよ!」
「……お前にとってのバンドはお遊びかもしんねぇけどよ、俺らは本気でやってんの」

 弥生先輩の声が、冷めていく。
 酷いほど、冷たい。

 自分の好きな音楽を、侮辱されたからか。


「その馬鹿みてぇな本気に付き合ってくれる仲間を馬鹿にすんなら、許さねぇぞ」

 弥生先輩の言葉に、詠ちゃんは目を逸らした。

「……バッカみたい。どいつもこいつも上手くないくせに」


 詠ちゃんはくるりと後ろを向いて不機嫌そうに歩き出した。
 弥生先輩はごめんなぁ、なんて苦笑する。

「あいつ素直じゃねんだ」

 そう言って顔を指でかいて目を逸らす。
 香月くんが大きく手を挙げて、ニッコリと笑う。

「こんな所で暗くなってないでさぁ! 早く行こう?」
「そっ、そうだね!」

 香月くんに賛同して、コンビニを出て弥生先輩の言う施設へと向かった。






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