a:アンチコンタクト 2 / 8

 違和感があるのが、一人。
 夏のピークも近付いており、暑くなっているのに学ランの上を着ている少年が目に入る。


「おい、しらゆき! お前こんな暑い日にそんなんきておかしいんじゃねぇの!」


 クラスの男子が馬鹿にしたようにそいつに近付いた。
 女みたいな性格、ひょろっちい体格と小さな背、それらを含めて男子は少年、雪代登を“しらゆき”と呼んでいた。
 たぶん名字から白雪姫を連想したんじゃね。

 当の本人はヘッドホンで音楽を聞いていて、そいつらの話なんて聞いてない。
 男子は無視すんなと悪態をつきながら席へと戻っていった。馬鹿だなあいつら。


 ――雪代登は変な奴だ。
 誰かと話をしようとしないし。
 体育の時も長袖長ズボン。
 いつも厚着。

 ひとりぽっちの男だ。




――






 放課後になって、掃除も終わって。
 帰ろうか、なんて鞄を取りに行くと誰もいない教室で雪代が机に伏せて寝ていた。
 ……そこ、俺の席なんだけど。


 あ、また音楽聞いてる。
 何聞いてるんだろ。

 雪代のヘッドホンをこっそり盗んで耳に当てる。
 誰の曲かは分からないけれど、バンドの曲だ。俺の好きなうるさい感じの曲じゃなくて、少し落ち着いた曲。でもすごく、いい曲だ。


「……ん」

 そいつの目がうっすらと開けられる。

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