a:アンチコンタクト 1 / 8 広間から音が聞こえてくる。 小学生のころから好きな音で。 心地よい低音域。トリッキーで飽きないメロディー。 「京也! 何弾いてんだ!」 「新曲ー」 母親が経営している施設に以前住んでいた10歳年上の吾妻京也は最近「REGURUS」とかいうバンドでメジャーデビューを果たした……と言っても新人だからまだまだ仕事は少ないらしい。 施設を出て一人暮らしをしている今も時折遊びに来てはベースを弾いている。 「弥生ベースくれてやったべ? 弾いてんの?」 「基本はできっけど京也みてぇに上手くならねぇ!」 「小学生のくせに口悪ぃなお前は」 「もう中学生だ!」 口癖は京也に似たって言われたしな! そいつはへらへらして、そっかー中学生かー、なんて笑う。 春になって、夏になって。 中学生になってから数ヶ月が過ぎていた。 「京也まだ昼家いんのか!」 「おー、みんなの帰り待ってるわ」 「まじか、じゃあ早めに帰ってくる! 行ってきます!」 「いってらー」 京也のおさがりの赤いパーカーを身につけて学校へと向かう。 施設から徒歩十数分の学校について自分の教室へと向かった。 御伽噺症候群 →アンチコンタクト おはようとクラスメートに挨拶をして席に座る。 ≪≪prev しおりを挟む back |