14:チルドレンピアニズム 6 / 10

 ですよね! そうですよね! 弥生先輩がベースを裏切るわけないですよね!!
 鬼みたいな表情で睨まれた。何この人怖い。


 先輩は楽譜をピアノの上に置いてふぅと息をついた。


「広明ぃ、9月25日土曜日にやろうと思うんだけど歌ってくんね?」
「再来週? 随分あけんね……その日フルタイムでバイトだわ、悪ぃね」
「まじかよ……じゃあ登に頼むか、香月もあんま上手くねぇよな」

 話が付いていけない。聞いていいだろうか。いいよね……?


「25日何かあるんですか……?」
「あぁー、美幸も遊びに来るか?」

 いやだから……何があるのかと。

「是非と言いたいところなんですけど、何をやるんですか?」

 弥生先輩のピアノ演奏がフルで聞けるようだし行きたいけどね。
 演奏会でもあるのかな?


「いや、うちの施設に新しいチビが来たんだけどよ、どうも馴染めねぇみてぇで1人で遊んでばっかなの。そいつ歌うことが好きみてぇだから25日にみんなで歌の会でもやろうかと思ってんだ」
「まぁ、日本に来て間もないアメリカの子でしょお? 馴染めねって普通」
「それな。同年代じゃ言葉も通じなくてなぁ、俺には懐いてくれるんだけど」
「良かったじゃん、珍しい」
「うるせ」



≪≪prev




しおりを挟む
back




BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -