14:チルドレンピアニズム 5 / 10

 歌い終わり、弥生先輩が声を掛けてくる。
 その笑顔は少し、歪んでいた。


「はい?」
「お前、歌下手だな」


 楽しそうに笑う。結構ショックなんですけど。
 弥生先輩の言葉に魚住先輩が彼をぽこりと叩いた。

「音痴な弥生には言われたくないと思うけど?」
「俺はいんだよ、演奏側の人間だからよ。リズム分かったべ? 広明英語」
「分かった分かった」

 同じところから演奏が始まって、サビを魚住先輩が歌う。
 やっぱり上手だ。というか歌詞を見ながらとはいえいきなり英語で歌えって言われて歌える魚住先輩は一体何者なんだ……


「……ちょっとここ歌いにくいか、歌詞の言い回し変えるか」
「このsweetから最後までまとめてitにすると良いかもね」

 やだもうついていけない。おバカな私にはついていけない。
 ハイスペック系男子多すぎて笑えないわ。


「弥生先輩はベースを裏切りピアニストへ……」
「あ?」
「冗談なので怒らないでください」



≪≪prev




しおりを挟む
back




BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -