14:チルドレンピアニズム 4 / 10 「いやぁ、星尾ちゃんがピアノの正体を知りたいって」 「ピアノの正体ぃ? 学校のはそこそこ値の張るグランドピアノだべ? ……あー、いいな、これ施設に欲しいわ。うちにあるピアノより全然音いいわこれまじ」 「いやそうじゃなくて、ピアノを弾いてる人の正体ね」 くすくすと魚住先輩が笑う。 俺ですけど、と弥生先輩が違和感なく答えながら楽譜を見て音を確かめていた。 普段着ているトレードマークの赤いパーカーは暑いのか珍しく脱いでいて、半袖の黒いカッターシャツ姿の弥生先輩だから、何だか別人のようにも見えてあぁ違う人がピアノを弾いてるんだなとか訳の分からない考えすら浮かんだ。 魚住先輩がピアノに近付いていってそれの上に手を置く。 「んー、歌いにきぃかもなぁ。ついでだしちょっと広明歌ってみてくんね、英語で」 「いいけど、これどんな歌だっけ? ……チョコレートのCMのだよね」 「そうだけど……おい、美幸、この歌分かるか? Vega」 「少し、なら」 「サビ歌ってみろ、サビ」 どこで入ればいいのだろうか。そんな悩みは露知らず、演奏は進んでいく。 思い切ってサビを歌ってみる。ずれたかもしれない。 「……美幸」 ≪≪prev しおりを挟む back |