14:チルドレンピアニズム 3 / 10 何でそんな当たり前のことを聞くのか、といった表情で魚住先輩のくりくりとした瞳が私に向けられた。 いやいやいや、あの、そんな当然みたいな表情を向けられると私がおかしいみたいじゃないですか。 「弥生先輩、なんですか……!?」 「うん? そうだけど」 何なんだあの人、ピアノもできるのか。 ちょっと羨ましいぞ。 「どうせ登も来ないみたいだし、音楽室行ってみる?」 魚住先輩が視聴覚室の出入り口を指さして笑った。 いいのかな、いいのね。 ちょっと見てみたい。 「行きます!」 そういうと魚住先輩は笑顔で立ち上がる。 私も魚住先輩の後を追って視聴覚室を後にした。 がちゃり。視聴覚室の鍵をしっかりとしめて私が元来た道を戻っていく。 音楽室に近付くと、綺麗なピアノの音が段々に大きくなっていった。 がら、と音楽室の扉を開けると同時に音楽の終わりが来たようで、その場所は無音になった。 確かに、弥生先輩がピアノの前に座っている。 ぱちりと、弥生先輩と目が合った。 「あ? どうした?」 弥生先輩は私たちから視線を逸らして楽譜を手に取り、何かを書き足していく。 ≪≪prev しおりを挟む back |