13:天然紳士はバイト中 8 / 9 登くん、甘いもの好きだもんなぁ。 いいよ、と言うと彼は目を細めて嬉しそうに笑う。 「はい、」 私がスプーンを手渡そうとしているのに、登くんは手を出そうとしない。 口を開いて、当たり前のように待機。 おいちょっと待て。 ここではいあーんをしろと言うわけですか? 雛鳥が餌を待っているように、口を開いてわくわくしてる。 あぁ、純粋な感情を踏みにじることなんてできない。 ……あれ、登くんって純粋じゃなくないか? 登くんの口元へスプーンを運ぶと、嬉しそうに彼はぱっくり口を閉じて咀嚼する。 「俺のアップルパイもわけてあげんね、はい、あーん!」 にんまり笑った登くんが一切れのアップルパイをフォークに刺して私にずずいと差し出してきた。 「美幸ぃ、俺にも一口」 弥生先輩がにやにや笑いながら自分を指差す。 ≪≪prev しおりを挟む back |