13:天然紳士はバイト中 2 / 9 にこり。 登くんが笑う。 その時大きな音を立ててドアが開いて。 真っ赤な装いの弥生先輩が目の前に現れたのだった。 「よし行くぞ!」 悪戯な顔をした弥生先輩が立ち上がるように促してくる。 登くんが立ったのでそれに倣うように立ち上がって私は来たばかりの視聴覚室にさよならを告げた。 帰宅するために電車に乗るわけではなく、駅から少しだけ離れた場所へ向かう。 そこは先日香月くんと一緒に歩いている時に見たお洒落な喫茶店だ。ミシェリーという喫茶店らしい。 魚住先輩が働いてるんだっけ。 ドアを押すとからんからんと軽やかな音が響く。 「いらっしゃいませ……あれぇ、お前ら来たの?」 魚住先輩がきょとんとした表情でこちらを見た。その表情は不快やら何やらの表情ではなくて、ただ単に驚いている表情だった。声がふんわりしててあまり驚いているようには思えなかったけど。 ≪≪prev しおりを挟む back |