13:天然紳士はバイト中 1 / 9 「視聴覚室に来い」 そう書いてあった弥生先輩のメールを元に、放課後私はその場所へと向かった。 ドアに手を掛けて少し開けると、高めの音が響いている。ギターの音か。登くんがいるのだろう。 「登くん……」 登くんがギターを弾く手を休めて私を見た。 「あぇ、星尾さんだぁ」 「邪魔してごめんね」 「ううん」 「弥生先輩は?」 「まだ来てないよ」 そう言って会話が途切れて。 再びギターの音色が響き出す。 「何弾いてるの?」 聞こえなかったのならそれでいいのだけれど。邪魔したいわけじゃないし。 登くんに届いたらしく、ギターを弾きながら彼はにっこり笑った。 「アイビス」 「CMソングだ!」 「うん。ギターの音だけじゃ分かりにくいよねこれ」 うん、ちょっとわかんなかった。 きっとベースやドラム、ボーカルが合わさるとわかるようになるんだろうな。 ≪≪prev しおりを挟む back |