12:パーカーヒーロー 4 / 7

「別に?」


 弥生先輩は睨むように目を逸らした。
 先ほどの機嫌の良い弥生先輩は何処へやら。


 アナウンスが学校の最寄駅に到着することを告げる。
 降りないと。と言っても流れに押されて降ろされるんだろうけど、降りる人多いしこの駅。


 弥生先輩に手首を掴まれて、ドアが開くと同時に駅のホームに着地する。
 流れを作るように、前を歩いていく先輩を追うように足を動かす。歩幅が全然ちがくて、あわあわと追っかける。

 改札口を抜けて、弥生先輩がようやく止まって。私は一息ついて項垂れた。


「お前気ぃつけろや」
「えっ、何がですか?」
「痴漢」



 えっ、痴漢。
 全然気付かなかった。

 だから、位置を変えたりとか、してくれたのか。


「あ、ありがとうございます……?」
「別に礼を言われるようなことはしてねぇけどよ」


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