12:パーカーヒーロー 2 / 7 ごしり。赤羽先輩な眠たそうにあくびをして、涙を拭うように目を擦った。 イヤホンを外して、にっこり笑った。今日は機嫌がよさそうだ。 背負っているベースが先輩の存在を主張している。 「久々ですね、電車で会うの」 「俺、基本自転車だからな」 え、あの距離を自転車……大変そうだ。しかもベースも担いでるんですよね? 「体力……付きそうですね」 「ふは、そうだな。体力つくわ」 何がおかしいのか。赤羽先輩は柔らかく笑う。 わぁ、優しい笑顔。 「つーかさぁ、俺、名前でいいから。名字呼ばれ慣れねぇわ」 ふと思いついたようにそう言った。 「……弥生先輩?」 「そう」 私の言葉に、先輩は満足げに笑った。眠たさなんて吹っ飛んでいきそうなくらい、きらきらした笑顔を向けられたのだ。 ≪≪prev しおりを挟む back |