それがわかりやすいものであっても、恋している本人が口に出すまでは告げない。
そんなの、暗黙の了解のようなもののはずなのに。
関係なしに、豊平は口にする。
「豊平! あんたいい加減にしなよ!」
立ち上がり口を開くと、先程と同様睨みつけてきた。
「いい加減にするのはてめぇらの方だろピーピーうるせぇな勉強もできねぇクソ共が喚いて口答えしてくんなや」
金髪の不良に勉強できねぇクソ共とか言われんの、何か腹立つ。
事実だから言い返すことなど、できないのだけれど。
「松室は女子に優しい人間なんだろ? そんくれぇ我慢できるよなぁ?」
他の人たちは何も口出ししない。
何もないかのように、目を逸らす。
ここではそれが、当たり前。
自分に被害が回ってこないように、目をつけられないようにできるだけ隠れている。それは当然の行動で、私なんかが責めることなんてできやしないのだ。
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