あぁ。
 豊平は楽しそうに口を歪めて陽那を見る。


 クラスは嫌に静まっている。



「そうだなぁ、津田川を虐めるのは酷いよなぁ? 津田川ぁ、やっぱ松室刺せや」
「……え?」


 静かな教室にいちるの動揺した声が反響する。

 陽那が僅かに、彼女から目を逸らした。


「できるよなぁ? 自分にやんなくていいんだ、嬉しいだろ? なぁ?」


 頭がおかしいのではないか、なんて今更で。
 最低なぐらい、豊平は笑顔を濃くしていく。


 クラスメートは何も言わない。
 上位は興味なさそうに、中間は脅えるように、下位は嫌悪の表情を浮かべるだけ。田中はただ仮面のような笑顔を張り付けていた。



「やっ、めなよ!」
「下位は黙ってろよクソ中里」

 ヒロの言葉に豊平は少年を睨みつける。
 ヒロは脅えたように肩を揺らして俯いた。



「できないのかぁ? あぁ、そうだよなぁ津田川は松室のことが好きだもんなぁ?」



 恋愛ごとなどよっぽど口の軽い人間がいない限り、相手本人のいる前で発言することなどないのだろう。


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