後ろを向いた五十嵐はにんまりと、楽しそうで。
彼は真っ直ぐと古屋さんを見つめていた。
「2人きりになろうかぁ、ね?」
席を立ち上がって、五十嵐は古屋さんの手を引く。
何処へ行くのかという田中の言葉に五十嵐は呆れたように肩をすくめた。
「空き教室ですよぉ。女子に対しての罰ゲーム、男女2人きりといえば1つしかないでしょ? 生憎俺は人に見られる趣味なんかないもんで」
いかがわしい行為をわざとらしくにおわせた五十嵐が静かに笑う。
「据え膳食わぬは男の恥、なんだぜセンセ」
そういって、笑顔で出て行った。
あぁ、あれ、何もしないんだろうな。
五十嵐への、謎の信頼というか何というか。そういうやつじゃないなって、なんとなく思った。
しぃんと静まり返った教室に田中のため息だけが響いた。
今更授業開始のチャイムが、鳴った。
「さぁて、どうしようか」
田中が思案するように呟いて足を組む。
「自習でいいかな?」
最低限の約束を守るというのか、“罰ゲームは最下位”という約束。
じゃあ代わりに19位、とはならないから少しだけ安心した。
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