何だか楽しそうな3人を見ながら小さく笑みをこぼす。

 嫌な場所でも、楽しい空間を作ることもできるのか。




「……ヒロ、教えてくれる?」


 そう中里を呼ぶと、彼はぱちぱちと目をまばたいてぽけらっとした顔を見せる。

 首を少し、傾けた。



「ほら、名字よりも名前とかあだ名の方が、仲良しになれるじゃん」


 だから、
 そう言うと、中里……ヒロは嬉しそうに笑う。


「香恋、ちゃん」



 照れくさそうに、呟いて。

 あ、可愛い。


 
 名前で呼び合って。
 笑って。
 ふざけて。

 一緒に帰って。


 テストの日まで、何度も何度も繰り返したそれは、青春の1ページだ、なんて。





+next story→「飛沫」

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