「……えぇー、いいよ別に」
「もうすぐテストなんだよ!?」



 私の否定的な言葉に、いちるが机を不満げにばしばし叩いた。


「せめて最下位は避けなきゃ……他の人がなっていいってわけじゃないけど、でも」



 彼女は、俯く。

 ……まぁ、そうだけど。
 仲良い人間が最下位になって、罰ゲームを受けているのを見るのも気分は良くないよなぁ。



 放課後、誰もいない教室は久々に心地の良い静けさだった。



「俺らとしてはありがたいけどさぁ、いちるちゃんも勉強しなきゃジャン」

「人に教えるのも勉強になるんだよー」


 ふふふ、と、いちるは得意げに笑いを零す。


「それに、今日は助っ人もいるのです!」
「それさぁ……」

 ちらり。
 陽那が視線をずらした。



 なんだ、と私も陽那が視線を向けた方を向く。

 不自然なように、扉の向こうに人がいた。


「助っ人、中里かな……」
「ソウダネ、中里だね」



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