中里は言葉を続ける。
「だから、いじめとか嫌、なんだ……でも、僕は弱いから、止めるとか、できなくて」
喋り方は今にも泣きそうだ。
治療を終えた中里は再びプールへと入ってくる。
いちるも続けて飛び込んできた。
「でも、止めた」
根性焼きは、酷い目に合った後だったから止められなかったかもしれない。
でも、今回。
中里は、止めようとしてくれた。
「……嬉し、かったの」
ぽつり。
俯きながら言葉を小さく紡ぐ。
プールの嫌な感触にも慣れ、躊躇いなく手を突っ込んでいく。
「話しかけてくれたから、順位とか、気にしないで、おはよ、って」
理由は、ほんの些細な私の行動だった。
朝、当たり前の「おはよう」。それだけ。
それすらも、失われている教室であると改めて認識して、悲しい気持ちにすらなる。
だけど、やっぱり間違っていない。
間違っているのは、あの階級制度なんだ。
「あっ」
いちるが声を上げたと同時に足を滑らせたのか全身で汚い水へと飛び込んでいった。
彼女本人は楽しそうに笑いながら立ち上がる。
「いちるちゃん、大丈夫?」
「うん大丈夫!そんなことより、あったよ!」
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