「……っう、」
逃げるの?
私は逃げるのか。
あんな目に合うリスクを侵してまで助けてくれようとした人を見捨ててまで、逃げるの?
ねぇそれって、
最低じゃない?
「ひ、っく……」
「泣いてんじゃねぇよ、気持ち悪ぃなズ」
思えば体が勝手に動いていた。
桜庭の手をはじいた。
中里に手を伸ばして、彼を立ち上がらせる。
潤んだ瞳をまん丸にして、私を見ていた。
「磯村ちゃぁん、手出さないでよー」
鈴木さんがつまらなそうに声を上げる。
「……やりすぎなんだよ!」
「良いんだよ、死ななきゃいーんだから」
当たり前のように、そう言う。
その場を動かずに、対立。
「駄目じゃぁん、上位に逆らったら!馬鹿なの?」
鈴木さんは変わらずくすくす笑う。
私に近付いてきて、肩をつかんだ。
「豊平は怖いけど私たちなら大丈夫って?」
「……目の前で傷ついてる人がいたら、助けたい」
「偽善者だねぇ、昼のは助けないのに?」
言葉が詰まる。
そうだ、私は昼休みに被害に合っている人は見て見ぬ振りをしている。
でも、今は。
人のために動いた中里を、助けたいって思ったんだ。
「別に、なんて言われても構わない」
私は、中里を
助けるよ。
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