鈴木さんが机に座り、笑顔をこちらに向けた。


待ってたって言われても、何か約束してました?

約束どころかまともに話したこともないじゃん、2人とも。




掃除してたけど、と陽那が笑顔を作った。




その言葉に、鈴木さんは視線を中里に移した。



「私たちは中里に頼んだよね?つまりぃ、中里が3人に頼んだんだよねぇ?」




……その通りだけど。

それがどうしたんだ。




桜庭は中里の制服を掴んで床に転がした。


中里はあの昼休みのように、机に背中を打ちつける。





「何で嘘ついたんだよ」



……嘘?



「お前こいつらがどこにいるか聞いたとき『知らない』って言ったよなぁ?」


「……だって、掃除なんてすぐ終わる、から……もう帰ってたかもしれない、って」

「へぇ、そう」




鈴木さんが机から降りる。



中里に近付いて、彼の胸を勢いよく踏みつけた。






他のクラスの生徒もほとんど帰ったからか、1番端の教室だからか。

廊下はやけに静かだった。



空気が気持ち悪くなりそうなほど嫌なもので、暑苦しく感じる。





「ねぇ隠そうとしたんだよね、そうだよね正直にそう言えばいいじゃん」


グリグリと鈴木さんは足に力を込めているのか、中里は苦しそうに口に力を込めた。






中里が嘘をついて?
私たちを隠そうとした?2人から?



……何で?






「ついていけないん、だけど」



ぼそりと呟くと、桜庭が笑った。





中里の、お腹を蹴った。
それでも悪びれた様子は見せない。




「お前ら3人さぁ、最近調子乗ってんなって、ちょっとしめてやろうかって話してたんだけどよ」


……それは本人の前で言うべきじゃないよね。




「中里、それ聞いてたんかなぁ、お前らを俺らから隠そうとしたらしい、よっ!」



勢いをつけて桜庭が中里を蹴る。


耐えられなかったのか、中里は吐いた。

苦しそうに、嗚咽を混じらせて。



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