勇気
走る。
走る走る。
昼休み。
購買に向かって私は走っていた。
何とか手にしたのは、購買限定のイチゴミルクパン。
教室に戻ると、笑顔の龍ヶ崎さん。
「わーい、ありがとー」
「……どういたしまして」
はい、私。
パシられていました。
息を整えて席につくとお疲れと2人が苦笑する。
お弁当を開けて口に運ぶ。
あぁ、お弁当が美味しい。
BGMは人の悲鳴だけど。
標的にならない日は、大体見て見ぬ振りをして食事をするしかなかった。
今日はいじめか、直接的暴力。
被害者は堀田さん。
逆らえば自分に被害がくるから、誰も助けようとしない。
最低な自分を誤魔化すように、2人と話をする。
毎日、毎日。
自分達を周りから遮断することに精一杯で。
向けられていた視線に、気がつくことは出来なかった。
帰りのホームルームが終わる。
退屈そうにのびをして、あくびをする陽那。
いちるが近付いてきて、楽しそうに笑う。
「帰りアイス食べに行こっ」
あ、いいね。
たまには寄り道も悪くない。
教室掃除はなし。
席を立ち上がって教室を出た。
廊下を歩いてしばらくすると、後ろから足音が聞こえてきた。
振り返ると、そこにいたのは中里だった。
「あ、あの……っ」
視線を逸らして、彼は声を発する。
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