優しさなんて。



「私は、優しくなんかない」
「優しいさ、人を傷つけるくらいにはね」


言ってることが矛盾している。

そいつを睨むとそいつは気にせずに言葉を続けた。





「君は弘信くんを助けようとしたろ」



……中里を。

助けようとした、と言っていいのだろうか。




私は何も、できなかった。



「他の人間を庇って傷つくのは君だけじゃないかもしれないね。それにぃ、中途半端に庇ってもらったって結局救われなければ恨まれるのは浩介じゃない、君さ。
美園ちゃんがいい例だね」



恨まれたって仕方ないじゃないか。



助けられなかったのは、私だ。





「……それだけ?もういい?」


話を聞いていれば嫌になってきそうだ。




「1つだけと言ったでしょう?」


つまり、これで終わりということでいいんだよね。




「ご忠告どうも。本当に嫌いだわ苛立たしい」

「ははは、酷い言いようだぁ」



けらけら笑うそいつ。





「俺は君が嫌いじゃないよ」

「はぁ、どうも」

「君は興味深い、面白いくらいに哀れで、優しくて、予想外」



馬鹿にされてないかこれ。

てか予想外って意味わかんないんだけど。

[9/10]

[*prev] [next#]
[mokuzi]
[しおりを挟む]
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -