「腕とかさぁ、力入れたら折れそうじゃね?」



そう言って、豊平は中里の腕を掴んだ。




は?
何、折るつもり?



本気なの、あいつ。





中里は目を開いて、苦しそうに声を上げる。


嘘だ、本気だ。



「やめ……」
「いい加減にしろよ!」



私が思わずあげた声は誰かの声でかき消された。





立ち上がって豊平を睨んでいるのは、飯田だ。


身長は高くないが、野球部なのもあってか体格は制服の上からみてもしっかりしている。





「……香恋、駄目だよ、逆らっちゃ」



いちるが小さく、そう言った。



……わかってる。

思わず声が出ただけだ。




「あ?」


「そんなことして、何が楽しいんだよ!」





飯田が豊平を責めるように叫んだ。









「馬鹿が苦しんでるのを見るのが楽しいんじゃね?」








他人事のように、そいつは笑った。


教室は嫌に静まっている。



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