彼は靴を履き替えて逃げるように教室の方へと走っていった。
……私も教室に向かおう。
「オハヨー香恋ちゃん」
隣の席の陽那がいつものように手を振って挨拶してきた。
「おはよう」
当たり前に返事を返した。
やっぱり教室は静かだけど……まぁ、テスト前よりは話し声が聞こえてくる。
話すと言っても、左右の人……成績が近い人とぐらいだけど。
いつものように田中が教室に入ってきて、ホームルームが行われる。
そして田中が出て行き教科担任が現れて授業が始まった。
授業くらいだ、平和なのは。
……嫌いだった授業が好きになれそう。
なぁんてね。
授業が終わった。
4つの授業は何事もなく終わり、昼休み。
「香恋ちゃんいちるちゃん弁当食おー」
「お腹すいたー」
陽那といちるがいつものように近付いてくる。
そうだ。
いつものように。
上位と目を合わせなければいい。
楽しくランチをすればいい。
目をつけられなきゃ、いいんだ。
「おい」
豊平の声が響く。
それは、私たちに向けられたものじゃなかった。
「弁当持ってどこ行くんだ?」
「……と、友達の所に」
豊平と視線が合っているのは、お弁当を持って教室の入口から出ようとしている中里だった。
豊平は中里に近付いて、肩を掴む。
そのまま、教室の方へ投げ飛ばした。
「……っ!?」
がちゃん、と大きな音をたてて中里がぶつかった机が倒れる。
[2/10]
[*prev] [next#]
[mokuzi]
[しおりを挟む]