そんな長い説明を1文でまとめないでくれるかな五十嵐。
そんなこと言ったら「理解しない君が馬鹿なんだよ」と鼻で笑われるような気がする。
お弁当を食べ終わった後に少し2人とだべる。
こんな普通のような会話が既に貴重な出来事である。
……3年生のクラス替えないもんなー普通の生活は卒業までお預けなのかな。
クラスを変えたいと思う一方、無理だと諦めつつある。
チャイムが当たり前のようになって、昼休みの終わりを知らせてくれた。
次は社会か。
日本史、世界史、倫理経済。
好きなものを選べる。
私は日本史を選んだ。
陽那は倫理経済、いちるは世界史。
見事にバラバラになってしまった。
……他のクラスと合同だし、まだ気が楽か。
「あ……美園」
「……」
美園、日本史なんだ。
美園は私を無視して前を歩いて行った。
ねぇ。
仲良かったじゃん。
「美園」
「話しかけないで」
ほら、反応してくれる。
無視すればいいのに、反応してくれる。
急に変わってしまった美園だけど、元の美園もちゃんと、残ってる。
美園の後ろを小走りでついていって、彼女の背中に声をかける。
「私は美園を友達だと思ってるよ、まだ」
「私はあんたのこと友達だなんて思ってない、もう」
彼女の突き放すような言葉は、続く。
「それに、あんたは私なんかいなくたって楽しそうだったし、構わないでくれない?」
美園は言葉を吐き出して、日本史の教室へと入っていった。
私は立ち止まる。
「そんなこと、ないよ」
そんなことないのに。
呟いた言葉は美園はおろか、誰にも届くことはなかった。
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