陽那が私の考えを否定するかのように言葉を吐いた。

彼の表情は嫌そうなものだった。


「違う、の?」

「違う、デショ」


視線を陽那から再び2人に向ける。

長いキスが終わり、2人は離れた。



「……抵抗しろよ」

「下位は上位に逆らえないって自分で復唱してたのに忘れたの。私はあんたより下。
逆らわない、抵抗しない、興味ない」

「……チッ、おもしろくねぇ女。
おめぇが嫌がるの、見てみようと思ったんだけどなァ」

「それは残念ね」

 

安藤さんはひどく冷静だ。

他人に……自分にさえ、興味がないと言うかのように。



もうすぐ授業が始まる。
もうすぐ先生が来るはずだ。



「はぁー……じゃあお前にすっかぁ」

「……私、?」


指を指されたのは

美園だった。



美園の表情を見た豊平がいやらしい笑いを見せて立ち上がった。


美園の机に近付いてがっと腕を掴んだ。

「そっ。お・ま・え」




乱暴に腕を引っ張って美園を連れて行く。

教室から出ようとする。


「やっ……」

「ちょ、っと!美園に何するつもり!?」


思わず立ち上がって声を上げてしまった。
豊平に、睨まれる。

蛇に睨まれた小動物の、気分だ。




「言葉にして言わなきゃわからねぇかよお子様にはァ」


わかるわ。
今の安藤さんの流れからして何が起こるかなんて、何をしようとしてるかだなんて。

だからこそ、止めるんじゃないか。



「豊平ー無理矢理はよくねーよ。女の子には優しく、ね?」


陽那がへろと笑って私の隣に立った。
張り詰めた空気を中和するかのような柔らかい笑顔。




「……最後列のクズの話を、なんで俺が聞かなきゃなんねぇんだ?」

馬鹿にしたようにそいつは笑った。

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