周りに火の粉を振りまくな。
口に指をとんとあて、言葉を止めるように促す仕草を五十嵐は見せた。
「世界は吐き気がするほどに滑稽で、嫌気がさすほどに奇っ怪だ。君が思うよりも遥かにね。
意外なことは沢山存在するのさ」
くすくすと笑う。
やはりというか、五十嵐の話し方は好きになれそうになかった。
「わかったら口を閉じて大人しく席に座るといい。センセーが来てしまったらぁ、1位に楯突く2位をどんな目に合わせるか君にも俺にもわからない」
語尾にかっこわらい、とかつきそうだ。
豊平は舌打ちをして席にどかりと座った。
……もし反抗している人間がいたら、田中先生はどんな目にあわせるのだろう。
規則があれば罰則も存在しているはずだ。
がらり。
タイミング良く入ってきた田中先生。
……いっそのこと豊平は見つかってしまえば良かったのに。
「はい、おはようございます……欠席は1人だね」
ぱ、と軽く見渡した。
1人休んだのか。
そりゃ休みたくもなるだろう訳がわからないもの。
私も休みたかった。
先生は休んだ人間には何も言わないらしかった。
本当、置いてけぼり精神なのか。
朝の連絡は特になく「今日も頑張りましょう」だなんて爽やか風に言ってみせてホームルームは終わりを告げる。
「それから、五十嵐くん」
「ふぁい」
「ちょっと話があるから来なさい」
「ふぁい」
眠たげに欠伸をしながら返事をする五十嵐。
先生は苦虫を噛み潰したどころか味わって飲んだのかというような顔をした。
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