「いちるちゃんはどのくらい刺してたっけぇ?」

 分からないや、と1度肌から抜いたカッターを再度刺す。

 数度繰り返されたそれに、吐き気すら覚えた。
 どうしてこいつは、躊躇いもなく自身を傷つけることが出来るんだろう。

「流石に気が狂いそうだぁ」

 五十嵐は笑いながら持ち手まで血がはねて赤く染まったカッターをゴミ箱へと投げ入れた。
 豊平の表情は歪んでいる、当たり前だ。五十嵐よりも豊平の方が幾分かは正常なのかもしれない。

「強姦は……どうしようか。浩介ぇ、君が俺を犯してみるかい?」
「気持ち悪ぃこと言ってんじゃねぇよ」
「ははは、そうだね。しかし君は女の子に酷い事ばかりしているものだね、彼女が知れば泣いてしまうよ?」

 五十嵐の言葉に、豊平は眉をひそめる。

「うるせぇな、人殺し」
「罵倒の言葉はそれしか出ないのかい? 頭はいいのにボキャブラリー貧困はちょっと困ったちゃんだぜ?」


 彼女。
 それに対する「人殺し」という反応。

 もしかしたら、先ほどの会話の彼は……豊平のことなのだろうか。
 五十嵐が、救いたくて救えなかった、少年。


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