「浩介ぇ、君は、」
「うるせぇよ」
止めなきゃ。
止めなきゃ。
止めなきゃ。
何で、嫌な奴なのに、どちらも。
ううん、そんなの、関係ない。
「いい加減にしてよ!!」
ネクタイを掴む手を払う。
解放された五十嵐は咳き込んだ。
「そこまですること、ないじゃん……っ」
「……いいだろ、こんな奴、死んで、も」
「何で香恋ちゃんが泣くのかなぁ、やっぱり君は……面白いね」
「あんたら、おかしいよ……っ」
泣く、泣いている? 私が?
瞳から零れてくる何とも言えない温度のそれを拭って、異常な2人を見た。
どこか動揺したような、いつもとは違う豊平を、五十嵐は笑う。
「浩介ぇ、君は俺を殺して……嫌いな俺と同じになろうというの」
それは呆れたような、嘲笑だ。
殺して、同じになる。
何だ、その言葉は。
だって、それじゃあまるで。
そんな言い方じゃ、まるで。
「黙れ、黙れよ……人殺し」
五十嵐が殺人を犯したことのある人間だって言ってるみたいだ。
+next story→「狂行」
[7/7]
[*prev] [next#]
[mokuzi]
[しおりを挟む]