豊平の言葉に、明るく笑ったのは五十嵐だった。


「八百長だろうと何だろうと、今の1位は香恋ちゃんだろう? 1位が固定されなくなった途端、納得がいかないから駄目だなんてぇ……願いが叶わないなんて1位を取る価値なんてなぁんもないね」


 五十嵐が立ち上がって豊平に近付いた。
 ぱっと堀田さんの手を引き離すように引っ張って、豊平の口元に人差し指を立てる。


「浩介ぇ、それじゃあ君がやっているのは上位の制裁でも何でもない……順位なんて気にしていないただの恐怖政治、だぜ?」


 にっこり。
 作り笑顔が浮かべられる。



「君は強くなってこういう事がしたかったの」



 五十嵐の言葉に、豊平は体の向きを変える。
 五十嵐を蹴り倒して、見下すように彼を見ていた。


 違ぇ。豊平はそう言って静かに顔を上げる。



「てめぇに復讐するためだよ、颯」



 そう言った豊平の顔は、いつもの嘲笑ではなかった。

 色で例えるなら、黒だ。
 喜びも憎しみもない、虚無。

 復讐。
 唐突に出た不可解な言葉に首を傾げたい気持ちにもなった。
 過去に何か、あったのだろうか。




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