「んだよ、何か言いたげだなぁ?」
「ひっ……」
目が合ったらしい堀田さんに豊平が近付いていく。
何か言いたげなんて、標的にするための適当な言葉付けなのだろう。
今日の標的はこいつだと言うように。近付いては力加減もしらない猿みたいに、視覚でも分かるくらい堀田さんの腕を強く掴んだ。
堀田さんの表情は段々と死人みたいになっていく。
今日の犠牲者は自分だと、理解していく。
私は立ち上がって2人に近付いた。
「……やめなよ、豊平」
「あぁ?」
「やめてって言ってんの」
「なぁんでお前の言うこと聞かなきゃなんねぇの」
睨み付けてくるそいつを、負けじと睨み返す。
教室は行方を見守るように静かになって、雨が窓に当たる音さえも聞こえてきそうな感覚だった。
明かりがついているはずの教室は、やけに暗く感じる。
私は虚像的に与えられた立場を、最低な人間のように振りかざす。
同じだ。
私も子供ながらに与えられたものを嬉々として振りかざしている、目の前の男と同類なのだ。
「今は私が1位だから、逆らえないよね?」
「……偽物トップが何言ってやがる」
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