弁当箱を開けば、いつものように女子高生には似合わない男子の弁当のような茶色いおかずが姿を現す。
 そんな弁当に箸を向けた。


「楽しいとお思いで?」
「楽しんでくれよ、俺からのプレゼント、だぜ?」


 そう口を挟んだのは五十嵐だった。
 頬杖をつきながらメロンパンを口に運んでいた。

 メロンパン1個で足りるのか、こいつ。
 食事が「楽しいこと」じゃなくて「作業」にしか見えないな、こいつが食べてたら。


「でも、香恋が1位なら嫌なこと、少しは減るのかも」
「うん、そうだね」


 いちるの言葉に、ヒロが賛同する。
 私が何か出来ればだけれど。何か出来るのだろうか。


 ちらり。
 五十嵐を見てみる。

 そいつは私が見たことに気が付いて、笑顔で首を少しだけ傾けた。



「感じてみるといいさぁ」


 弧を描いた口元が腹立たしく感じる。
 どうしてかこいつは気に食わなくて仕方ないのだ。
 理由なんて、振り返ればきっと呆れたくなるほど出てくるのだろうけれど。



「自分の無力さを」



 残酷な言葉に聞こえるそれを、五十嵐はただ単調に吐き出した。




 少しだけ教室が騒がしくなって、今日も豊平による最低な横暴が始まったのだとすぐに分かる。



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