本性

 はぁ。
 目の前の教卓に立つ男が納得のいかないように溜め息を吐き出した。

 それに五十嵐は満足げに、明るい声を口にしてみせる。


「どうしたんですかぁセンセー、生徒の前で溜め息なんて吐き出して」


 馬鹿にしたような言葉に田中は五十嵐を睨んで返答する。
 それに対して五十嵐は笑うだけだった。

 舌打ちをかました隣の男は立ち上がる。
 それを見たクラスメート数人は、怯えたような反応を見せる。自分が標的にされる、嫌なことを思い出したのかもしれない。


「面白くねぇな」
「そーお? 面白いよ、俺はとても」

 豊平の言葉に五十嵐が単調に応えた。


 それが気に食わなかったのか、豊平は五十嵐を睨み付けてそちらへと向かっていった。
 最後列に足を進めた豊平は元私の……五十嵐の席の前で足を止めた。


 目の前のそいつの胸ぐらを掴んで、無理やり立ち上がらせる。


「あぁでも……てめぇをぶっ潰すことは出来るわけだ、颯ぇ」



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