「そう、それはどうでもいいんだけどさぁ、香恋ちゃぁん? 嫌いな相手がキスしようとしてるのに目をつぶって受け入れるのはどうかと思うぜ?」
「……っ、受け入れてたわけじゃないし!」
「そーお? 顔真っ赤にして上目遣いで結構そそられたけどぉ」
「有り得ない有り得ない!! あんた変態じゃないの!? 性欲もなさそうな顔してるくせに!!」
「真昼間から性欲とか言っちゃうのやめなよ、香恋ちゃん、痴女に思われるぜ?」
ばっからしい!!
こいつなんて利用されまくればいい、ざまーみろだ!!
五十嵐から離れて、再び背を向ける。
「帰るの?」
「帰る!!」
「そう、気を付けて帰ってねぇ。みんなには香恋ちゃんの機嫌は直ったけど帰ると……おっと、照れて帰ったと伝えておくよ」
「死ね五十嵐」
「残念だけど俺は生きるよ」
五十嵐はひらひらと手を振った。
一瞬、ほんの一瞬。
そいつが寂しそうな表情を見せた気がして。
違和感に残ったけれど、すぐに笑顔に戻ったから。
私は何も言わずにその場を立ち去った。
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