「じゃあいいデショ、嫌いになったんじゃないなら。一緒に行こう」
「無理っ……」
それ?
ようやく聞けた言葉が、それ?
何だか悲しいもんだ。
「何で」
「一緒にいたら、またっ、傷付ける……っ! やだっ、そんなの、やだ……」
今にもいちるちゃんはぐちゃぐちゃに泣き出しそうだった。
一生懸命泣き出すのをこらえて、目を瞑る。
なんだか俺も泣きたくなって、唇にぎゅうと力を込めた。
「傷付いたのはいちるちゃんだろ」
俺の言葉に、いちるちゃんは目を開けて丸くした。そうして俯いて、表情は見えなくなる。
「俺の行動が結果的にいちるちゃんを苦しめたよね、俺が傷付くところを見せて……でもそれでも。俺はいちるちゃんに傷が付くところなんて見たくなかったから」
だからあれで、よかったんだ。いちるちゃんを傷付けることに変わりはなかったけれど、後者になるよりはましだと思った。
俺の言葉を聞いてもいちるちゃんは顔を上げない。あげようとしない。
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