「驚いたなぁ、香恋ちゃんは参加しないと思ったから」
「ヒロと……陽那といちるも、参加するから」
それを聞いて五十嵐は納得したような表情へと変化させる。
「いちるちゃんと陽那くんねぇ……」
至極どうでもよさそうに、そいつは考えたふりをする。
「……君は本当に本当にお人よしだぁね。楽しいかい？」
「そうだね、すごく楽しいわ、友達のいない五十嵐にはわからないと思うけれど」
皮肉気味にそう言ってやれば、五十嵐は楽しそうにけらけら笑った。酷いなぁだなんて心になさそうな言葉を吐き出す。
「香恋ちゃぁん、頭の上の蝿を追った方がいいと思うぜ？」
蝿？視線を上にずらす。
蝿なんていないじゃないか。いたとしても追う必要なんてないし。
私の行動に、また五十嵐が笑う。今度は馬鹿にしたように。何なんだこいつは、腹が立つ。
ヒロが困ったように小さな口を開く。
「……ことわざで『他人の世話を焼く前に自分自身の始末をつけろ』ってこと、だよ？」
「ありがとう」
そんなことわざ知らないし。寧ろ知ってたヒロに拍手。
五十嵐は目を細める。
あ、また。その目が笑っていない笑顔。そういうの怖いからやめた方がいいと思いますけど。
「君はまだ逃げているだろう？」
何に？
そんなこと、わかっている。
美園から。美園のこと、から。
[6/11]
[＊prev] [next＃]
[mokuzi]
[しおりを挟む]