丁度いちるが教室を出ていって。
陽那がそれを追いかけるように、ゆっくりと教室の後ろのドアから出ていった。
私は息を吐き出して、立ち上がる。その息は安堵なのか、緊張なのか。あの2人さらに関係を悪化させて――などしてこないだろうか……大丈夫だとは、思うけど。
田中はひょいと現れて最低限の連絡事項を口にしてすぐにいなくなった。職務怠慢だろ。まぁ私は顔なんて見たくないから万々歳だが。
「あれ、陽那くんは……?」
陽那がいないことに気が付いたヒロが教科書を抱えながら私の前に現れる。あぁ、次移動教室か。ヒロが持っているのは地理の教科書。じゃあ私は日本史か。
なんでみんな地理なんだ。寂しいじゃないか。
「いちるの所。ヒロ、さっき五十嵐が言ってたバーベキュー参加しない?」
「いいと、思うよ……? みんなに会えるの、嬉しいし」
可愛いなぁ。まぁ夏休み初日らしいから懐かしいねーもくそもないけどね。
五十嵐が私の目の前に現れる。
「香恋ちゃあん、参加してくれる?」
「……参加、する」
嫌ですけど。本当はあまり参加したくないですけれど。そんな感情を向けて。
私の返事に五十嵐はほんのちょっぴり、驚いた表情を見せた。
[5/11]
[*prev] [next#]
[mokuzi]
[しおりを挟む]