企画
数日間いなかった陽那が戻ってきた。
「怪我、大丈夫なの?」
痛々しくまだ残っている跡に目を向けながら問いかけると陽那は苦笑する。
「大丈夫大丈夫ー」
まだ痛いんだろうな。
けらけらと何もないかのように陽那は自分の席に座る。
少し前までは私が座っていた廊下側の席だ。
私は元・陽那の席に座って教室を見渡した。
「……あ」
ふいに無意識に出たような陽那の声が聞こえてきて、陽那が向いている方向を見る。
教室の入り口にいちるが立っていて、恐怖に溺れたような表情を浮かべていた。まるで、嫌悪されることを恐れるような表情だ。
いちるは挨拶も交わさずに俯いて自分の席へと戻っていった。
陽那も、何も言わない。ただ、悲しそうな表情を浮かべた。
いちるは陽那を傷付けたことを心底後悔していて。彼女はあの日から、私たちに近付くことはなくなった。
私たちの周りの空気は良くはならない。こんなクラスのせいで、大切なものが離れていきそうだ。
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