いちるがやけになったような衝動で、自分を刺そうとするような動作を見せた。
 陽那がそれを止める。

 豊平は、笑ったままだった。



「面白くねぇから、それ却下なー」



 何が面白くないからだ。
 寧ろ今の何が面白いというのか。


 豊平が早くしろと催促する。

 それはそれはもう楽しそうに、人の気持ちなんてあえて知らないふりをしていた。

 時計は授業開始から30分経過したことを告げるようにかちりと針が時を刻む。
 あと20分。
 やけに、時間の経過が遅く感じる。




「ひっ……うぅ、うあああああああ!!!!」



 泣きながら、狂ったようにいちるはカッターを振るう。

 陽那の左腕にそれは刺さる。
 彼女は精一杯の力を込めたのか、深く刺さったらしいカッターは刃の銀色の大部分を赤で染め上げていた。



「泣くどころか嗚咽ひとつ漏らさねぇのな、つまんね」


 豊平は陽那を一瞥してそう呟いた。




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